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【第18話】畠山重忠のピンチを救った小山一族(2022年10月1日 投稿)




水野先生コラム:18回目

ライター:『鎌倉殿と不都合な御家人たち 「鎌倉殿」の周りに集まった面々は、トラブルメーカーばかり?』(まんがびと)『小山殿の三兄弟』(ブイツーソリューション)、『藤原秀郷』(小学館スクウェア)著者・水野拓昌



「坂東武士の鑑」畠山重忠は1205年(元久2年)に突如滅びます。北条時政の陰謀で謀反の疑いをかけられても一切弁明せず、圧倒的な兵力差の鎌倉の大軍を相手に正々堂々と戦い、敗れました。畠山重忠といえば、鵯越の逆落としで馬を担いで降りたエピソードなどが知られ、勇猛さ、実直さ、優しさを兼ね備えた名将でした。




■ ハンスト、引きこもり、梶原景時の讒言?


源頼朝の生前にも、畠山重忠は謀反を疑われたことがありました。

1187年(文治3年)です。代官の不始末があって、拘禁されたのですが、困ったのは身柄を預かった千葉胤正。「自身には罪はない」との主張なのか、畠山重忠は7日間寝食を断ちます。ハンガーストライキです。千葉胤正のとりなしで頼朝は重忠をただちに許します。

畠山重忠は自領の武蔵・菅谷(埼玉県嵐山町)に引きこもりますが、ここで、梶原景時が頼朝に重忠の処罰を進言します。

「畠山重忠は(代官の罪で)拘禁されたことはこれまでの大功を破棄されたようなものだと言って所領に引きこもり、謀反を起こそうとしているという情報があります。一族がことごとく在国しており、これはつじつまが合っています。放っておいてよいでしょうか」

畠山重忠は謀反を疑われましたが、梶原景時の密告は理由が曖昧で、あからさまな讒言(ざんげん)。『吾妻鏡』の記述は、梶原景時を悪役に仕立てた作り話っぽいものです。



■「畠山殿は実直」結城朝光が真っ先に弁護


頼朝はさっそく何人かの有力御家人を集めて協議。侍所別当(軍務長官)の和田義盛や三浦義澄らだけでなく、小山朝政はじめ小山一族も協議に加わっており、頼朝の信頼の厚さがうかがえます。

真っ先に畠山重忠を弁護したのは小山朝政の弟・結城朝光でした。

「畠山殿はもともと実直で道理をわきまえた方。謀反を起こすような人ではありません。その情報はきっと偽りでしょう。使者を遣わし、畠山殿の意思を確認してください」

いい人だから謀反は起こさないという理屈ですが、それを堂々と言うのが、この場のメンバーの中でも断トツに若い結城朝光らしさ。ほかの参加者も直ちに賛同し、結城朝光の率直さが見事に流れを決めたのです。



■「互いに将軍の末裔」下河辺行平の説得


結城朝光の発言によって、畠山重忠の意思を確認することになり、頼朝の使者として「弓馬の友」である下河辺行平に白羽の矢が立ちました。小山朝政の従兄弟です。

武蔵・菅谷に到着した下河辺行平が事情を説明すると、畠山重忠は憤慨。腰の刀を手に取ります。

「讒言する者の口上によって、お召しがあると称し、だまし討ちにするため貴殿を派遣されたのであろう。己の因縁を恥じるばかりだ」

下河辺行平は自害しようとする畠山重忠の手をとって押しとどめます。

「もし貴殿を討ち取ろうというのなら、恐れるべきことではないのでそのような姑息な策は用いない。貴殿は将軍の末裔(まつえい)であり、行平もまた将軍の末裔である。もし貴殿を討とうというのなら、事実を明かしたうえで挑み戦うことも面白いだろう。だが、朋友である行平が使者となったのは、もちろん無事に連れてこいという(頼朝の)おはからいであろう」

将軍の末裔とは、互いに鎮守府将軍の子孫であることを指しています。坂東平氏・秩父氏一族の畠山重忠は平良文(平将門の叔父)の子孫であり、下河辺行平は藤原秀郷の子孫。それぞれ、平安時代中期、鎮守府将軍に任官されたことのある名将です。征夷大将軍はもともと臨時の職で、鎮守府将軍こそが武士のトップにふさわしい官職でした。

下河辺行平はその点を強調したのです。

下河辺行平の説得に応じ、畠山重忠は鎌倉行きに同意しました。鎌倉に到着した畠山重忠は、梶原景時の求める起請文提出も拒否し、あくまで弁明する必要はないという立場を貫きます。頼朝は畠山重忠と下河辺行平を呼んで雑談しますが、この騒動について一切触れませんでした。

畠山重忠の謀反、梶原景時の讒言のいずれについても、あったともなかったも結論を示さなかったのです。両者を処罰しない苦肉の策でした。

畠山重忠の頑固さには周囲も少々手を焼いたようですが、結城朝光の尊敬の念や下河辺行平の厚い友情が畠山重忠のピンチを救ったのです。



【次回のコラムも乞うご期待!】


▼前回【第17話】のコラムを見る▼

















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