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【第23話】結城朝光、不用意発言で招いた大ピンチは思わぬ展開に…梶原景時の変(2022年12月11日 投稿)




水野先生コラム:23回目

ライター:『鎌倉殿と不都合な御家人たち 「鎌倉殿」の周りに集まった面々は、トラブルメーカーばかり?』(まんがびと)『小山殿の三兄弟』(ブイツーソリューション)、『藤原秀郷』(小学館スクウェア)著者・水野拓昌



1199年(正治元年)、結城朝光が大ピンチに陥ります。自身の発言から謀反を疑われ、死罪にされかねない危機に直面しました。いや、処罰はいったん決まっていたのです。ところが事態は思わぬ展開に。そして、鎌倉暗闘劇の始まり「梶原景時の変」を招きます。いったい何があったのでしょうか。



■ 頼朝しのび「二君に仕えず」…2日後には処罰の危機に


1199年(正治元年)10月、結城朝光は同僚御家人に呼びかけ、この年1月に死んだ源頼朝をしのんで念仏を唱える会を開きました。その席での一言が問題となります。

「忠臣は二君に仕えず。特に自分は亡き将軍(頼朝)には大きな恩を受けた。遺言なので出家しなかったが、今は後悔している。昨今の世情は薄氷を踏むようだ」

頼朝を懐かしむ素直な気持ちを吐露したもので、出席者も同感だったのか、そのときは特に問題になりませんでした。しかし、「自分が主君と仰ぐのは頼朝だけ」とも聞こえるし、現政権批判にもつながる言い方です。2日後、朝光は阿波局からそっと知らされます。

「一昨日のお言葉を梶原景時さまが告げ口し、あなたさまの処罰が決まったそうです」

阿波局は北条政子の妹で、幕府女官。阿野全成(頼朝の異母弟)の妻であり、権力中枢の近くにいる女性です。頼朝側近・朝光とは旧知の仲であった可能性は大いにあり、極秘情報を知らせてくれたのかもしれません。


■形勢逆転!梶原景時弾劾、御家人66人が署名


驚いた結城朝光は、友人・三浦義村に相談します。ここで三浦義村が逆転劇の作戦を立案。13人の合議制メンバー、すなわち「鎌倉殿の13人」である和田義盛、安達盛長を味方に引き入れ、書記役の文官も呼び、この日のうちに梶原景時を弾劾する文書を作ります。

翌日、大勢の御家人が鶴岡八幡宮に集結。66人が梶原景時弾劾の連判状に署名しました。連判状は大江広元に提出され、さらに和田義盛が大江広元に政治決着を迫ります。事情を知らされた源頼家は景時をかばうことはなく、12月には景時の鎌倉追放が決定。有力側近として頼家の意思決定にも影響力を持っていたはずの景時が逆に追放されたのです。大勢の御家人の「梶原憎し」の感情が世論となって、一気に大勢を決めました。

年が明け、1200年(正治2年)1月、所領を抜け出して西に向かった景時は駿河・清見関(静岡県静岡市清水区)で地元の武士と合戦。奮戦むなしく梶原父子は討ち取られます。「梶原景時の変」はあっけなく決着。結城朝光は大逆転劇でピンチを脱したのです。


■はめられたのは梶原景時?粛清劇の幕開け、黒幕は…


しかし、これはあまりにできすぎています。手際が良すぎるのです。梶原景時は源頼家に言い訳もしておらず、確かに結城朝光を標的とした先制パンチを放ったはずですが、その後は防戦一方。追い詰められるように所領を抜け出し、最後の合戦も待ち伏せされていたかのようです。

黒幕は誰か。怪しいのはこの間あまり表に出てこない執権・北条時政。重要な役割を果たすのは阿波局と三浦義村ですが、阿波局は時政の娘で、三浦義村は時政のきな臭い仕事を請け負っている可能性のある人物です。例えば、この後のことですが、畠山重忠の乱(1205年)で榛谷(はんがや)重朝、稲毛重成を抹殺し、畠山重忠を陥れた罪を両名になすりつける役割を果たします。無骨な父・三浦義澄とは違い、政治的な動きが目立ちます。

また、結城朝光の兄・小山朝政もなかなか怪しくて、景時に代わって播磨守護に任命されます。景時討伐前の1199年(正治元年)の年末です。裏取引というか、何かの見返りを感じさせる人事です。

1201年(建仁元年)、景時に親しい城長茂が謀反を起こしますが、最初に標的にしたのは京の朝政邸でした。

梶原景時はイメージ通り、陰湿な手段でライバルを陥れる人物だったのでしょうか。

確かに上総広常だまし討ち事件があり『義経記』では悪役、『吾妻鏡』にも他人の悪口を頼朝に吹き込む場面があります。一方『平家物語』では義経と激しく言い争う場面もありますが、剛勇さや人間らしさもみせ『曽我物語』では和歌もたしなむ風流な面もみせます。

また、城長茂や藤原高衡(藤原秀衡の四男)、木曽義仲の旧臣・海野幸氏ら敵から転身した御家人に慕われていたようです。政治力、意外な人脈もある文武両道の名将でした。それだけに頼家側近としてのしあがる可能性があり、ライバル排除を狙う者の標的になったのかもしれません。



【次回のコラムも乞うご期待!】


▼前回【第22話】のコラムを見る▼















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