【会員寄稿コラム】藤原秀郷流を訪ねて……《4》小山氏~嫡流への誇り(2025年4月4日更新)
- t-kojima12
- 4月4日
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更新日:4月4日
2025年4月1日
栃木の武将『藤原秀郷』をヒーローにする会
佐野支部 永島正光

小山髙朝(秀朝)像
先日小山市立博物館で館長佐久間弘行氏の講演「悲劇の闘将小山義政」を拝聴し、余韻捨てがたく気の向くままに散策へと
小山祇園城(天翁院)~須賀神社~網戸(あじと)神社へ
小山氏と言ったらどんな名前が浮かぶでしょうか?政光、三兄弟(朝政、宗政、朝光),義政……ですかねぇ
へそ曲がりの私が今回選んだのは秀郷の「秀」の字から8代当主秀朝と、秀郷の「郷」の字から9代当主朝郷二人。秀朝が下野国主と守護を兼任してから11代当主の義政が「義政の乱」で滅ぶまでの約50年が小山氏の最盛期だったようです。
大義に殉じた秀朝
この秀朝、前の名前は高朝。鎌倉幕府14代執権北条氏高時の「高」を賜りましたが、鎌倉幕府が倒れた後、遠祖秀郷の「秀」に変えたようです。
1335年、北条高時の遺児の中先代時行が信濃で挙兵しましす(中先代の乱)。そうです昨今話題のあの「逃げ上手イケメン若君」。
秀朝は武蔵府中にて迎撃しますが敗北、ところが敗走せず100人以上の家臣達共々討ち死に(自害?)してしまいます。これには次のような逸話が残っています。「武蔵府中には国府があり遠祖秀郷公が国主を拝命しゆかりの地、由緒ある「秀」の一字賜ったからにはこの府中の地を見捨てて逃げたとあってはご先祖秀郷公に顔向け出来ぬ」と、じ~んとくる話です。因みに天翁院(小山氏菩提寺)には「贈正五位小山秀朝公」の大きな板碑があります。


小山氏の略系図を見ると「郷」の付く名前が二つ、9代朝郷と14代持政の子氏郷です。この氏郷ですが、元服し子供もいたようですが家督を相続する前に二人とも病死してしまったようです。家督は同族の山川氏より成長(しげなが)が相続しますが、この成長の「成」の字と氏郷の「氏」は初代古河公方、足利成氏からの偏諱(へんき※1)です。
氏郷と言えば秀郷信者で有名な蒲生氏郷が有名ですが…
さて9代当主朝郷ですが、「朝」の字は元々はあの源頼朝から2代目朝政への編諱のようですが、小山氏,結城氏の通字(とおりじ※2)でもあります。「郷」の字は勿論、秀郷のからだと信じています。
※1 偏諱(へんき)…将軍や大名などの実名の一字を功績のある臣下に与えること
※2 通字(とおりじ)…先祖から代々受け継がれている漢字で実名の一部として用いられる
「藤氏一揆」幻の坂東管領

父秀朝が武蔵府中で戦死し若くして家督を継いだ朝郷ですが、北朝(足利)方として戦功をあげます。1337年南朝(後醍醐天皇)方のイケメン若大将北畠顕家に居城、祇園城を攻撃され捕縛されてしまいます。その後、南朝方の雄、同族の結城宗広の嘆願により助命されますが、再三の南朝方の誘いにも応じず、かと言って北朝方としても活動した様子もありません。小山家は北朝方の弟、氏政派と二派に分裂、朝郷は1346年失意の内に亡くなり氏政が家督を相続します。特に特記事項のない朝郷ですが、実は幻の第三勢力計画の主人公の一人だったんです。
1330年摂関家、藤氏長者となった近衛経忠は1337年北朝方から南朝方に転じ主戦派の北畠親房に対して穏健和睦派(自分自身と藤原氏が中心になる)の第三勢力を画策、側近を東国に派遣、懐柔していた形跡があります。ここの「藤氏」とは秀郷流嫡流を自負する小山氏を筆頭に結城氏、長沼氏、佐野氏、小田氏(寒川尼は小田氏始祖八田知家の姉)などです。
見事にこの「藤氏一揆」が成功した時には小山朝郷が前関白近衛経忠をトップとした勢力の№2の「坂東管領」に…晩年の小山朝郷の中途半端な態度もこれが影響していたのかも知れません。
ゆかりの地
小山祇園城北の天翁院にある小山氏始祖小山政光、小山義政、小山芳姫の墓標
須賀神社にある「秀郷流小山会」の由緒碑 小山会会長の小山文子氏や長沼盛治氏の熱い思いがひしひしと伝わってきます。ここには小山義政、小山朝政の板碑もあります。
網戸(あじと)神社にある寒川尼、結城(網戸)朝村の墓標
最後に小山三兄弟の母で政光の妻「寒川尼」ですが、時には後妻の表記があります。後妻となると前妻がいなくてはなりません、昭和48年3月栃木県史編纂室の小林友雄氏の「栃木史のしおり 資料偏 中世1」の中にこんな記述があります。「小山政光の前妻は源頼茂の娘、男子あり名は頼経、祖父頼茂が京都で暗殺?されると小山家を離れ京都で源氏を継ぐ…」源頼茂はあの源三位頼政の孫で鎌倉幕府の有力御家人、実朝亡き後のお飾り将軍争いから承久の乱へ…
参考資料「栃木県史のしおり 資料偏 中世1」小林友雄氏(栃木県史編纂室)
「悲劇の闘将小山義政」 佐久間弘行氏(小山市立博物館館長)
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