【会員寄稿コラム】栃木県は琉球王国の起源?⑦
- t-kojima12
- 6月20日
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更新日:7月4日
2025年6月20日
栃木の武将『藤原秀郷』をヒーローにする会
会員 安延 嶺央

琉球の文化といえば独自に発展したもの、というイメージが強いかもしれませんが、実は昔から色々な地域の文化を取り入れて来ています。14〜15世紀の頃、琉球は「万国津梁(ばんこくしんりょう)」と言って、アジア各国との交易の中心として栄えていました。
そのような場所に集まるのは、物資や財宝に加え、各国からの人、そして「情報」ではないでしょうか。人から人に、口で伝えられるようなものはなかなか記録に残らないのが難点ですが、当時の琉球人は驚くほど様々なことを知っていたに違いないのです。
そしてまた、文化風習にも、多くのものを取り入れていたのではないでしょうか。今回はその一端を掴んだかもしれないお話をします。
「ようどれ=夕凪」は本当か?
20年以上前に流行った『島唄』の歌詞に、「このまま永遠に夕凪を」という一節があります。戦争の体験をふまえ平和を願う歌詞ですが、何故「夕凪」が平和を表すのでしょうか?
琉球国王のお墓が、「ようどれ」と呼ばれているのです。「浦添ようどれ」は英祖王統と第二尚氏のお墓、「佐敷ようどれ」は尚巴志の父尚思紹のお墓とされています。
この「ようどれ」が夕凪の意味で、静かで平和な極楽を表しているとされているのです。「ようどれ=夕凪」は、沖縄学の父と言われる、伊波普猷(いはふゆう)氏以来の定説です。
しかし、本当にそうなのでしょうか?「浦添ようどれ」の中に収められている厨子には極楽や仏様の彫刻が施されており、とても宗教的な色彩が濃いように見えます。
それなのにその名称が「夕凪」というある意味素朴な自然現象ということがあるでしょうか?
また、そもそも「凪」とは、海と陸地の温度の朝夕の均衡がもたらす自然現象で、水は温まりにくく冷めにくく、陸地はその逆であることによるものです。
常に海水温が高い上に、陸地面積は小さい沖縄では本州ほど明確な「凪」という現象は少ないように思います。
そして、夕方の沖縄の海は海面から照り返す西日が強烈で蒸し暑く、とても快適な場所・時間帯とは言えません。夏の沖縄で爽やかなのは何といっても早朝です。
このようなことを趣味の釣りをしながら実感してきたのですが、この気候風土の中で暮らす人たちが、「夕凪=極楽、平和」という感覚を果たして持つのだろうか?と素朴かつ強い疑問を感じます。
実は「浄土入り」?
そこで再検討してみたのですが、「ようどれ」(琉球方言発音「ゆーどぅり」)は、『浄土入り』ではないでしょうか?
ローマ字で″YUUDURI″と書くとわかりやすいと思います。YとJ、UとOを入れ替えてみて下さい。
突然ですが、愛知県の奥三河地方に古くから伝わる神楽に、「浄土入り」というものがあります。
老いた人が橋を渡り、生まれ変わって再生することを表しているそうです。死者の鎮魂ではなく、生きているうちに生まれ変わり、神に近づく、ということです。
平たくいえば現世で徳を積み、その上で来世は極楽へと言うことでしょうか。ある意味、生と死の境界すら不明瞭で、昔の琉球の死生観にも通じるように思われます。
伊東氏とともにやってきた思想たち
では何故、愛知県の奥三河なのでしょうか?実はここも、伊藤姓が多く、伊豆の伊東氏が関係する地域なのです。伊豆流人時代の源頼朝と関係し、日向国つまり宮崎県に領土を持ち、島津氏とせめぎ合いをしていた、あの坂東武者の伊東氏です。
この日向の伊東氏が、那須氏の琉球交易に関与していたと考えていますが、「ようどれ=浄土入り」の思想も、琉球に出入りしていた伊東氏関係の人たちによって持ち込まれたのではないでしょうか。
他にも、三山統一で有名な尚巴志は犬に育てられたという伝説がありますが、これも伊豆天城に類似したものがあります。
伊東氏は那須氏の協力者、というより、時流を見ながら、琉球交易を行う勢力に拠点や人員を貸与するような存在だったのでしょうか?
琉球を通じた交易は、北関東の坂東武者を主な柱としていますが、そこに至る所で関係する伊東氏の存在は琉球の文化を考える上で無視できないようです。
次回は、やや時代が下り、琉球王国の船のムカデ旗と北斗七星のお話をしたいと思います。
筆者プロフィール
安延 嶺央 (やすのぶ れお)
関東で育ち、関西で学び、沖縄に暮らしています。あるきっかけから歴史に関心を持ち、古代から中世の列島の歴史について調べるうちに、琉球王国には坂東武者が深く関わっていることを確信し、坂東武者について調べる中で坂東武士図鑑(※当HP)に巡り合いました。坂東武者と琉球の関係を綴っていきますのでよろしくお願いいたします。
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