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【第2回】肝心な時に不在⁈3兄弟の父・小山政光 (2022年1月15日 投稿)



水野先生コラム:2回目

ライター:『小山殿の三兄弟』(ブイツーソリューション)、『藤原秀郷』(小学館スクウェア)著者・水野拓昌



小山3兄弟が「鎌倉殿」源頼朝の忠臣として活躍した原動力は何か? 


小山3兄弟と頼朝の関係が築かれた発端は? 


キーマンは、小山氏初代であり、3兄弟の父・小山政光です。


栃木県小山市のキャラクターも「政光くん」。

地元からも愛されている歴史上の偉人です。その実像は……。




■実は正体不明…ミステリアスな小山氏初代「小山政光」


ところが、ところが……。

小山政光の具体的な言動はほとんど分かっていません。

ゆるキャラになるくらいだから、もっと輪郭がくっきりした人物かと思いきや、史料に残る言動は、おそらくただ一つ。


『吾妻鏡』に1189年(文治5年)7月25日、源頼朝を宇都宮で接待したとき、大言壮語を吐く場面があります。これは別稿で取り上げる予定です。


ほかは、小山朝政の父であるとか、寒川尼は政光の妻であるとか、朝政が野木宮合戦を戦うときは不在だったとか、結城朝光が「父政光からは何も財産を引き継がなかった」と言い、この時点(1199年)で他界しているとか、間接的な情報ばかり。本人登場は、1189年の1回きりです。

系図類で親子関係や官職は分かり、下野国大掾(だいじょう、国司3等官)か権大介(ごんのだいすけ、仮の国司次官)の地位にあり、在庁官人(現地採用組の地方幹部)でトップクラスの有力者だったことが分かります。


なお、後白河法皇(当時は上皇)は1166年(永万2年)に小山荘を伊勢神宮に寄進。それ以前に政光が法皇に寄進していたはずで、中央政界や有力貴族とのパイプがあった可能性はあります。






■下野守・源義朝の新参家臣として出世? 妻は頼朝乳母



小山政光の妻・寒川尼は源頼朝の乳母(めのと、養育係)でした。

史料的な根拠はありませんが、政光は、頼朝の父・源義朝と主従関係にあったはずです。いつからか。義朝が下野守に就任したのが1153年(仁平3年)。


ここが一つの転機かもしれません。


義朝は長男でありながら、父・為義との関係が険悪になり、鎌倉を拠点に坂東武士とのつながりを強めていきました。その時点での小山政光の動向は不明ですが、義朝に従う関東の有力武士が増えれば、政光も選択を迫られるはずです。義朝に従うか、対抗するか、無視して独立独歩の道を選ぶか。


『保元物語』『平治物語』には、保元の乱(1155年)、平治の乱(1159年)で源義朝に従った坂東武士の名が並んでいます。


義朝の側近中の側近、鎌田正清をはじめ、相模では、三浦氏、山内首藤氏、波多野氏、房総方面では、上総広常、武蔵にも斎藤実盛や足立遠元といった顔ぶれ。少年に近い年齢だった熊谷直実もいます。この中に小山政光の名は出てきません。


平治の乱で源氏没落後に臣従したとは考えられず、このときは義朝家臣の中では新参者で、所領も小さく、目立つ武功も挙げられなかったのでしょうか。


ですが、妻が主君の嫡男の養育係というのは、出世間違いなしのポジションで、義朝は政光に大いに期待していたはずです。


ただ、全く別の想定もできます。

寒川尼は政光の後妻であり、頼朝の乳母を務めたのは政光との結婚前、政光と源義朝の縁は薄かった……。こうした推測も可能なのです。






■一代で坂東屈指の武家にのし上がり、秀郷流嫡流を自任


頼朝が挙兵のときに書状を送ったのは、なぜか政光の嫡男・朝政宛て。野木宮合戦時も政光は不在。平家追討の合戦でも、政光の名は一切出てきません。


小山政光は肝心な時に全く名前が出てこないのです。


それでいて、1189年の登場時には、頼朝の面前で「家来を派遣して忠義を尽くす」と、小山氏の武勇、功績を誇ります。政光の功績は、歴史の中にすっぽりと隠れてしまっているわけです。


ただ、小山発展の功績はあります。

政光は大田氏の庶子で、政光の父は大田行光、または行政。

父を行光とした場合、兄弟の大田行広、大河戸行方、下河辺行義は大田氏の通字「行」を継承しているのに対し、政光はこの字を受け継いでいません。(父を行政とした場合、行広、行方はいとこ)


このままでは、兄・大田行広の庶弟として小領主で終わるはずでした。そこを政光は粉骨砕身、小山郷を自力で開墾して有力者として成長。一方で本来、本家の大田氏が衰退、庶家だった小山氏が本家を出し抜いて秀郷以来の下野国在庁職(国司の役職)を継承して秀郷嫡流(主流)を自任。関東でも屈指の有力武家にのし上がったのです。










▼前回のコラムはこちら♪



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